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はか
墓
宮本 百合子
「サンデー毎日」1926(大正15)年7月1日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,972 字 · 10 页
三
葬儀をすまして帰りぎわにいい置いて行ったとおり、祐之助は三ヵ月ばかり経って上京した時、一枚の設計図を持って来た。彼は、故人が存生の頃どおり茶の間にあぐらをかきながら、
「どうです」
と、巻いたワットマンをひろげた。
「いいだろう」
それは、荻村の墓の図案であった。祐之助は、生前故人をよろこばせられなかった代り、墓だけは自分にまかせてくれと、やかましくいって引受けたのであった。
彼は、ポケットからエ※・シャープを出し、
「よく御覧なさい、ここにほら一枚大きい石がはまってるでしょう、ここがとりはずし自由で、内が龕(がん)になっているというわけさ。――どうだね」
彼は、覗いている尚子にいった。
「立派なもんだろう? このとおりの色の大理石を使うんだぜ。型だってなかなか凝ったものだよ」
尚子は、疑わしいような表情で、淡いチョコレートに黒の斑入り大理石を使い、イオニア式台石か何かかさばった図案を見守った。
「――この――御戒名書いたところ――こういう風にはすっかいになるの?」
「そうそう、ここが工夫したところだ。真っ直立ったのじゃ平凡だが、ここがこう羊皮紙を巻きのばしたように――よくローマ人の絵にあるだろう――こうなって、左右の下にどっしりこの台が出ている。