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こわれたバリコン

壊れたバリコン

海野 十三

「無線と実験」1928(昭和3)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,132 字 · 23 页

青空文庫

その電波長は五メートルとか六メートルとか言った程度の頗る短い電波を出したり受けたりしようというのです。放送ラジオの波長の百分の一位に当りますから、うまい具合に受信機には全然ラジオを聞かないで済みました。

しかし僕の実験は、放送が終った午前十時から夜明け頃にかけてやるのが通例でした。其の時間中は短波長通信には殊に好都合の成績が得られるからこんな変な時を選んだのです。

さて送信をやってみますと、なるほど電波はうまく空中へ飛び出すことが判りましたが、僕の短波長通信に応じて呉れる相手は中々見付りませんでした。米国や英国あたりでは素人のラジオ研究家が大分増えて来たとのことを聞いていましたので、その応答を予期して毎晩のように実験を繰りかえしました。先ず五分間ばかりは、僕が呼出信号を空中へ打って出します。それから今度は空中線を受信機の方へ切り換え、それから五分も十分も耳を澄まして何処からか応答があるだろうと聴いているのですが、いつぞや返事のあった験しがありません。僕はそれでも一向断念しませんでした。今にもどこからか「ハロー、オールド、マン」とモールス符号で呼びかけてくる僕同様の素人ラジオ研究家のあるべきを信じていました。