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こわれたバリコン
壊れたバリコン
海野 十三
「無線と実験」1928(昭和3)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,132 字 · 23 页
だったのです。僕は毎晩のように鉱石の上を針でさぐりながら、銚子局の出す報時信号のリズムに聴き惚れたものです。受話器を頭から外して机の上に横たえておきましても三四尺も離れた寝床に入っている僕の耳にそのシグナルは充分はっきりと聞きとれました。エーテル波の漂う空間の声! 僕はそれを聞いていることにどんなに胸を躍らして喜んだことでしょう。いつの間にやら夜も更け過ぎてしまった、戸外は怖ろしい静寂の中に、時々凩が雨戸の外を過ぎて行くのに気が付きまして、急に身体中が寒くなり夜着をすっぽり頭から引被って無理に眠りを求めるなどという事も間々ありました。
年月はうつりかわっていつの間にやら我国にも放送無線電話が始まりました。エーテルの世界には毎晩のようにJOAKの音楽やらラジオドラマが其の強力な電波勢力を誇りがおに夜更けまでも暴れているような時勢になりました。僕はただもう、そういう放送によってエーテルの世界が騒々しく攪きまわされることが厭でたまりませんでした。僕は反感的に放送を聴くことを忌避していました。そして其の頃にはまだホンの噂話だけであった短波長無線電信の送信受信の実験にとりかかっていました。