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こわれたバリコン
壊れたバリコン
海野 十三
「無線と実験」1928(昭和3)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,132 字 · 23 页
何は兎もあれ僕はスウィッチを直ぐ様、送信機の方へ切換えると「応諾」の符号を送りました。波長は四・五メートルを指していました。
軈て相手からは、生々とした返事がありました。其のシグナルはまことに微弱である上に、波長が時々に長くなったり短くなったりして僕の聴神経を悩ませました。しかし相手の報じて来る内容が少しずつ判明して来ると共に、僕は全身の血潮が爪先から段々と頭の方へ昇りつめて来るのを感じました。耳は火のようにほてり、鼓動は高鳴り、電鍵を握る指端にはいつの間にかシットリと油汗が滲み出ていました。相手は何者か! 相手は何処の無線局であるか? 其処では只今何事が起っているのか? それは其時に交換した次のような奇怪きわまるモールス符号の会話が、一切を少しずつ明白にして行って呉れましょう。
相手「貴局ト通信ガ出来ルコトヲ甚ダシク喜ブモノナリ。予ハ今甚ダシキ危険ニ臨ミ居レリ。当方ノ信号ハ微弱ナリヤ?」
僕「貴局ノ信号ハR2(微弱ナレド辛ウジテ読ミ得ル程度ノ意)ナリ。但シ不安定ニシテR1(微弱ニ聞コエ判読不能ノ意)又ハR3(微弱ナレド受信可能ノ意)ノ範囲ニ変動スルヲ認ム。