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へんなおとこ
変な男
豊島 与志雄
「中央公論」1923(大正12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页
中村は、やはり今井を素直でない人間だと考え、衒っている――というのが悪ければ少くとも――僻んでいるのだと思った。澄子は、今迄通り今井を滑稽化して眺めたかったが、何かしら滑稽だとばかりは見做せないもののあるのを感じた。そしていろいろ考えた上、結局彼を野蛮人だとした。
所が或る日、その変人で夢想家で野蛮人である今井が、雨にびしょ濡れになって帰って来た。学校から戻ったばかりの澄子が、袴姿のまま出迎えると、彼は雫の垂れる帽子を打振って水を切りながら、足が汚れてるから雑巾を下さいと云った。それを聞いて、台所にいた辰代がバケツに水を汲んできた。今井さんにありそうなことだ、と澄子が思ってると、辰代の方ではこう云っていた。
「雨の中を傘もささずに歩いていらっしゃるってことがあるものですか。あなたも少しお友達の真似をなすって、傘を借りっ放しにしていらっしゃれば宜しいではございませんか。」
「いや図書館に行ってたんです。」
「あら、今井さんでも図書館にいらっしゃることがあって?」と澄子は云った。
「たまに行ってみたから罰が当ったんでしょう。霽れるのを待つつもりだったんですが、少し気分が悪いから帰って来ました。