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へんなおとこ
変な男
豊島 与志雄
「中央公論」1923(大正12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页
見ると、辰代は押入の中に首をつっ込んで、手当り次第に品物をかき廻していた。
「お母さん、何をしてるの?」と澄子は静に尋ねてみた。
「何でもようござんす。あなたは学校の勉強でもなさい、遊んでばかりいないで!」
澄子は顔をふくらしながら、机の常に坐って、何を考えるともなく、ぼんやり考えに沈んだ。
玄関に残っていた中村と今井とは、暫くは口も利かなかったが、ややあって、今井は火鉢の上に伏せていた頻を、徐々にもたげて、度の方を向いてる中村の横顔が、眼にはいる所までくると、ふいに口を開いた。
「私が悪かったんでしょうか。」
「え?」と中村は見返った。
「私の方がそんなに悪いんでしょうか。」
「悪いと思ってあなたは謝ったのではないのですか。」
「悪い……というよりも、済まないと思ったんです。」
「どっちにしたって、結局同じことじゃないですか。」
「いえ違います。……じゃああなたは、私が悪いと思われるんですね。」
「私は何も事情を知らないんですから、悪いとか善いとか、そんなことは分りませんが……、」そして中村は軽い微笑を浮べた、「ただ、あなたは少し……芝居気が多すぎるようですね。」