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へんなおとこ

変な男

豊島 与志雄

「中央公論」1923(大正12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页

青空文庫

「え、芝居気が……。」

「と云っちゃ言葉が悪いか知れませんが、兎に角、不真面目さが……その態度にですね、態度に人を喰ったような不真面目さが少しあるので、それで人から悪く思われるのじゃないでしょうか。」

今井は一寸顔の色を変えた。そして暫く黙った後に、怒りを強いて押えつけたような調子で云った。

「あなたに聞いたのは私の間違いです。あなたは純真なものを、何でも滑稽化して見る人です。ここの小母さんのことだって、あなたは滑稽だと思っていられるんでしょう。」

中村は皮肉な苦笑を洩らした。

「ついでに、澄ちゃんのことも滑稽だと思ってるかも知れませんよ。」

今井はぎくりと眼を見開いた。そして相手を見据えながら云った。

「あなたとはもう口を利きません。」

「そうですか。御自由に……。」

中村がそう云ってるうちに、今井はもう立上って、二階の室に上っていった。その姿を見送って、中村はまた苦笑を洩らした。

台所でじゃあじゃあ水の音がしていた。怒った時にはやたらに用をしないではいられない辰代が、夜遅く、他に仕事もあろうに、何か洗濯物をしてるのだった。中村はその音に耳を傾けたが、やけに敷島をすぱすぱ吹かした。