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かわる

変る

豊島 与志雄

「知性」1942(昭和17)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,972 字 · 14 页

青空文庫

「あなたは、その奉天の店をやらせる女を、女房がわりの女を、酒を飲み廻って探し廻っているが、それがいけないんだ。だから、あなたの満洲の話には、酒場の匂いがするし、金儲けの匂いがする。もういい加減によしたらどうです。誰も真面目に聞く者はありませんよ。」

村井はじっと大五郎の眼の中を見た。

「ここにしたって、春枝までが笑っている。あんな真似は、満洲ではどうだか知らないが、こちらでは通用しませんよ。これからは、もう春枝には構わないで貰いましょう。」

ウイスキーのせいばかりではなさそうだった。春枝を誘い出そうとしたことを、村井は知ってるに違いなかった。

それでも、大五郎はたじろがなかった。なにか鈍重な酔いかたで、そしてちょっと浮いた気分で、彼方に立っている春枝の方を、明らさまに振向いて眺めた。若々しいきゃしゃな身体つき、ういういしい尖った※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)、捉え難い黒目、それらがぼやっとぼやけて、割烹着の花模様の青と黄と赤とがちらちらした。その色合の上に、あの、威勢のいい肉附豊かなお上さんの、小紋錦紗のはでな姿が重ってきた。彼女なら、東京者という金箔をつけて、奉天の店を繁昌させるだろうと、想念がちらと掠め去ったが、あとはただ白々しい空虚が残った。