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かわる
変る
豊島 与志雄
「知性」1942(昭和17)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,972 字 · 14 页
それが、着附のうまさにすらりと見えるが、贅肉が多く、首筋が太く、声はしゃがれていた。
「ほんとは、お断りしたかったんですよ。やたらにほかのお客さんに話しかけると、気分をわるくしますからね。満洲の写真だの、そんなものは、新聞じゃあるまいし、ここには不向きですよ。いきなりいろいろなことを並べられたら、誰だっていい気持はしませんからね。ほんとはお断りしたかったんですよ。お酒は一本きりですから、すんだら帰って下さいよ。」
彼女は云いたてながら、畳敷きのところから、狭い板廊下を通って、青布の暖簾の彼方へ消えた。暖簾の向うは、広い板の間で、相当な料理屋の勝手許になっていて、この酒場はつまり、その料理屋の宣伝機関の一つなのである。それから見れば別に不似合でもなく、畳敷きの上手の半間の置床には、青銅の薄端に水仙の花の一茎がすっきりと活けてある。
大五郎はその水仙の花をぼんやり見ていた。客が二人はいって来て、畳敷きの下手の方の餉台につき、女中が酒と小皿物を運んでいったが、大五郎はまだぼんやりと、水仙の方に酔眼を向けていた。
丸髷の女がまた暖簾から出て来て、元の席へ行きながら、彼の方へいいたてた。