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へんじんでん
変人伝
佐々木 邦
「日の出」新潮社、1934(昭和9)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,178 字 · 21 页
友人同僚あらゆる知人と喧嘩をしてしまったんですから、自分の為めに泣いてくれる人間があるのに驚いたのらしいです。『有難う』とニッコリ笑って、もうそのまゝでした。大往生でした」
と竹内さんが臨終の模様を話した。病気は腎臓炎だった。通知に接して、島崎さんと菊池さんが駈けつけた。
「大野、到頭いけなかったのか?」
「何故生きている中に会ってくれなかった?」
と二人も泣いた。
竹内さんが遺言状を預かっていて、皆の前で開封した。
一、余はオーノコータリヤにて満足す。後は立てるに及ばず。
一、○○銀行預金一切はこれを植物学協会へ寄附す。
一、郷里の不動産はこれを処分して現金に代え、甥道彦、甥雅男、姪ふみ子、姪きく子の四名の間に四等分す。
僕は叔父と三年間一緒にいる中にすっかり諦めてしまったけれど、矢張り靴に有りついた。
「保険には入っていなかったのかね?」
と島崎さんが訊いた。
「何うして/\。僕は一遍勧誘員を紹介して、頭を打ん撲られたよ」
と菊池さんが答えた。
叔父の葬式は意外の盛観を呈した。死は凡ゆる経緯を清算するものらしい。二晩目の通夜に集った連中は皆喧嘩相手だった。