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なつのよのぼうけん
夏の夜の冒険
平林 初之輔
「文学時代 第二巻第九号」新潮社、1930(昭和5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,930 字 · 12 页
まして相手は若い、おまけに美しい女なのだ。若い女の涙という奴はどうも男には苦手だ。
私たちはそれ以上追及することはやめた。そして、何だかひどく意義のあることをしたような、拾い物をしたような気持ちになってその家をひきあげたのであった。
――駒込橋のとこのカフェにいるから、すぐにむかえにいってやりなさい。
帰りがけに私たちは、玄関にうなだれている二人の夫婦に向かっていい気持ちでこう言ってやった。
もう三時過ぎていたのに、近所のかみさんたちがぞろぞろ起きてきて、いつのまにか、門口に黒山を築いていた。
――ほんとにひどい女ですよ。
――あれくらいなことでなおるもんですか、今にあの子はもっとひどい目にあいますよ。
――毎日旦那がつとめに出るとすぐにひいひい泣かせてるんですからね、近所のものがはらはらしますよ。
――芸者あがりですねきっと。
――芸者ならも少し気がきいてますよ、板橋あたりの女郎か、玉の井ですよ。お里は。
――旦那が意気地がないんだ。あんなまねをさせておくなんて。
私たちはこんな憎々しげな罵声の中をわけて、かみさんたちに顔を見られながら出ていった。