轻松读懂日语经典作品
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ゆうもやのなか
夕靄の中
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,522 字 · 19 页
二
年は三十五六、日にやけた肉の厚い頬に、眠たそうな、細い眼をもっていた。
「お線香は火をつけるんですか」
花の束が出来ると、娘はそう云って、一種の眼つきでこちらを見た。それは好意のまなざしかもしれないが敵意を含むように思えた。
阿迦桶を持って、ついて来ようとする娘を断わって、彼はその店を出た。
二
寺の門をくぐるまで、そして、鐘楼の脇を通って墓地へ入るまで、彼は息苦しいほど緊張した。
――かかるなら墓地へ入るまえだ。
そして、墓地へ入ってしまえば、慥かにとはいえないが、脱走の機会があるかもしれない。彼は躯じゅうの神経で、うしろのけはいに注意した。
その男は跟けて来る。振返ってみるまでもない。その男は眠たそうな(しかし少しも紛れのない)眼でこっちの背中を瞶めながら、迷いも焦りもない、拾うような足どりで、跟けて来る。それはちょうど、眼にも見えず切ることもできない糸で、しっかりと結びつけられてでもいるような感じだった。
だが彼は墓地へ入った。
――東の端へ、まっすぐにゆけ、そこから入谷へぬけられる。
線香の煙に咽せて、咳が出た。石敷の道を左に曲り、右に曲る。