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よるのわかば
夜の若葉
宮本 百合子
「婦人朝日」1940(昭和15)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,072 字 · 24 页
「そうでしょう、みな元気らしいわ、でもあの辺は紫外線が足りないから子供はこの頃ハダカ主義なんですって」
桃子はまた手摺のところにかけ、順助はすこし離れたところに横になっているのであったが、ふっとその体が動いた気配で桃子がそちらへ向くと、薄闇の中にワイシャツが白く浮いて順助は胡坐になっている。そして、二つ折にした座蒲団を胡坐の上へかかえこむような形で、
「ね、桃ちゃん」
といった。いつもの気持のいい順助の声である。けれども、その声にはごく微かに何だかふだんでない響があるようで、桃子は返事が喉につまった。
それにかまわず、順助は、
「ね、僕が君に結婚を申し込んだとしたら大変にそれは唐突かい?」
ああ、ああ、このいいよう! 熱い光った波が体を貫いて桃子はそのまま攫われてゆきそうな気がした。考えたのはやっぱり自分ひとりではなかったのだ。
「――まるで考えないことだったかい?」
「そうじゃないわ」
それどころか、桃子はくりかえしくりかえし何度考えたであろう。特に勤めるようになっていろんな男のひとたちのタイプを見るにつけ、桃子には順助が決してどこにでもいる青年でないことがますますはっきりして来たのであった。