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よるのわかば

夜の若葉

宮本 百合子

「婦人朝日」1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,072 字 · 24 页

青空文庫

「どう思う?――不可能だろうか」

桃子はいつの間にか手摺をすべりおりて、窓に背をつけて坐った。

「可能性があると思う?」

「ね、順助さん……」

涙がつきあげて来て、桃子はやっと圧しつぶした声で、

「どうして従兄なんかに生れて来たのよ!」

両方の頬ッぺたを流れる涙を、桃子は荒っぽく手の甲で拭いては、それを子供らしくスカートにこすりつけた。

「父さんたち、ほんとに頓馬だわ、兄弟だなんて」

桃子は涙と一緒にそういって苦しそうに笑った。

「それ僕も同感だ」

「――そのこと、どう考えた?」

「だって、桃子、こうやって話す以上僕としては考えてみてのわけだろう!」

順助の調子は何と説得的だろう。桃子の心と体とはそういう順助の声の優しい重さに撓うばかりである。けれども、そのように瑞々しく撓えば撓うほど、桃子の肉体の内に一つの叫びが高まるのをどう説明したらいいだろう。

桃子は暗いあたりを力とたのむように思いつめた勢で、

「それでずっとやって行ける?」

といった。

「私こんなたちでしょう。私子供うみたいと思いそうなの――わかる? 私のいう意味がわかる? 私たちの心持。それだけのねうちもっていると信ずるの。