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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页

青空文庫

日本人として見るにしのびないのだ。渡して行ってくれ。それとも渡すのがいやだと、云うんなら、僕は、くどいようだが、もう一度君たちの前で……」

と、小沢はちらと豹吉の顔を見て、

「――演説屋の長講一席をくりかえさなくちゃならない」

龍太はだまっていた。

すると、兵古帯のお加代はいきなり、小沢の手に自分の拳銃を渡して、

「あんたに渡すのじゃないわよ。日本人全体の迷惑になる――っていう、あんたの言葉に渡すのよ」

と、言った。そして、龍太に、

「――あんたも渡したら、どう?」

「うん」

龍太はいやいや返事して、未練たらしそうな顔で、小沢に拳銃を渡した。

「ありがとう。それでこそ君たちは……」

「日本人だと言うんやろ。おだてるのはやめてくれ」

さア行こうと、隼団が引きあげると、青蛇団も引きあげかけた。

小沢はお加代を呼びとめて、

「その唖の娘は、いつから青蛇団にはいったの」

と、優しくきいた。

「今日から」

と、お加代は言って、ふとしみじみした口調になると、

「――ほら、見てやってごらん」

と、唖の娘の腕をまくり上げて、

「――可哀想に刺青の墨の色がまだ濡れてるわよ」

「刺青……?」