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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页

青空文庫

――どや、今夜はこれで幕ということにしようか」

と言った。

隼団の龍太に、もう喧嘩はやめようと言われて、豹吉は両の頬ににやっとえくぼを浮べながら、ペッと唾を吐き捨てると、

「そやなア。この演説屋の長講一席に敬意を表することにしようか。だいいち、おれは人をあっと云わせることは好きやが、売るのも買うのもあんまり好きやない」

そう言った途端、ふと渡辺橋で釣をしていた男の言葉を想い出した。

――「食わん魚釣って売るつもりか」

――「……? ……」

――「変な顔をするな。喧嘩のことや」

豹吉はいきなり呟いた。

「……あの男は死によったが、おれは死に損うた」

龍太は拳銃をポケットに入れると、

「じゃ、引きあげよう」

と、隼団の連中を連れて、引きあげかけた。

「一寸、待った!」

と、小沢は呼びとめた。

「まだ何か用か」

「うん。――その拳銃、僕に渡してくれ」

「何……?」

「君たちは、いや、僕ら日本人は警察官以外拳銃を持つことは許されていない。しかも君たちがそれを持っていることは、君たち自身ばかりでなく、日本人全体に迷惑が掛かる。――渡して行ってくれ」

「………」

「僕は君が拳銃を持っているのを、黙って見てるわけにはいかないんだ。