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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页

青空文庫

ガマン(刺青)の針助はとっくにつかまったんだから」

と、小沢は普通の調子で言った。

読者はもう想像がついたであろう。小沢が何のためにS署へ来ていたかということを。

察しのつく通り、小沢は細工谷の針助の家で針助を縛りあげるとその足で、S署へ送ってきたのだった。

わざわざS署をえらんで送って来たのは、雪子の行方を空しく探し廻っているうちに十時が来て中之島公園へ駈けつけようとしてS署の前を通り掛った時、警官に連れられてS署の玄関へはいって行く雪子の姿を見たからであった。

小沢は針助を送って行くと、針助の家にあった雪子の著物を署員に見せて、

「この著物がないため、あの娘はふと魔がさして宿屋の著物を盗んだのです」

と、雪子のために弁明し、釈放をもとめたが、生憎雪子の係の刑事は、当直ではなかったので、雪子を留置するとそのまま自宅へ帰ってしまっていた。

小沢はその刑事が翌朝出署してから、改めて交渉しようと、ひとまずS署を辞すことにして、玄関を出ようとした途端、豹吉に出会ったのである。……

「えっ、針助が……?」

つかまったのかと、豹吉はもう少しで、掟を破って、驚くところだった。