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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页

青空文庫

そう思ったのは、しかし一つにはその絵がレインコートのすぐ下の娘の一糸もまとわぬ裸体を聯想させるからであった。

「とにかく、この裸を何とかしてやらなくっちゃならない」

幸い女中の持って来た寝巻があった。が、娘は小沢の見ている前では、恥かしくてよう着更えまい。

「君、これを着たらどうだ」

小沢はそう言って、いきなり部屋の外へ出て行った。

そして、わざとゆっくり便所から帰って来ると、娘はちゃんと寝巻に着更えていた。

しかし、その寝巻は寸法が長いので、娘は裾を引きずっていた。それが滑稽でもあり、そしてまた、ふと艶めかしくも見えた。

「長いね」

小沢が言うと、娘は半泣きの顔になり、

「ふん」

と、鼻の先で笑ったが、何思ったか急にペロリと舌を出して、素早くひっこめた。

寝巻に着更えたので、やっと人心地が甦ったのであろうと、小沢もふと心に灯のついた想いがしたが、それだけに一層不幸そうな娘がいじらしくてならなかった。

「ところで、も一度きくけど、一体どうしてあんな恰好で飛び出したの」

小沢は裸のことを、再びきいてみずには居られなかった。すると娘は急に悲しい声になって、

「それだけは、きかんといて……」