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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页
「お休みなさい」
女中は出て行った。
小沢はほっとして、部屋の中を見廻した、寝台は一つしかなかった。その上の方に、安っぽい女の裸体画の額が掛っていた。
「なるほど、こりゃいかにも連込み宿だ」
小沢は改めて感心したように呟きながら、苦笑した。
ダブル寝台――といっても、豪華なホテルにあるような、幅の広い寝台ではない。シングル(一人用)の寝台より少し幅があるように見えるだけで、ただ枕が二つ並んでいるのでダブル寝台といえるわけだ――その上に煽情的といっていいくらい派手な赤い模様の掛蒲団が、掛っている。
そして、寝台の枕元の壁には、安っぽい裸体画の油絵の額が掛っている。わざと裸体画を選んだのであろう。
たしかに苦笑せざるを得なかった。
経営者はこの部屋の使用される目的にふさわしいように、そんな額を掛けたのに違いない。
そして絵の安っぽさはかえって効果的だと言えるかも知れない。
けれども、そのような絵は往々にしてこの部屋へ来る客たちを照れさせ、辟易させるという意味で逆効果を示す場合もあろう。
すくなくとも小沢は辟易していた。
「まるでわざとのように、こんな絵を掛けやがった」