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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
01 第一部上
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页
」
「半蔵さま。お前さまも聞かっせいたかい。」
「どうも牛方衆は苦手だなんて、平助さんなぞはそう言ってるぜ。」
「冗談でしょう。」
その時、半蔵は峠の組頭から聞いた言葉を思い出した。いずれ中津川からも人が出張しているから、とくと評議の上、随分一札も入れさせ、今後無理非道のないように取り扱いたい、それが平助を通して聞いた金兵衛の言葉であることを思い出した。
「まあ、そこへ腰を掛けろよ。場合によっては、吾家の阿父に話してやってもいい。」
牛方は杉の根元にあった古い切り株を半蔵に譲り、自分はその辺の樹陰にしゃがんで、路傍の草をむしりむしり語り出した。
「この事件は、お前さま、きのうやきょうに始まったことじゃあらすか。角十のような問屋は断わりたい。もっと他の問屋に頼みたい、そのことはもう四、五年も前から、下海道辺の問屋でも今渡(水陸荷物の集散地)の問屋仲間でも、荷主まで一緒になって、みんな申し合わせをしたことよなし。ところが今度という今度、角十のやり方がいかにも不実だ、そう言って峠の牛行司が二人とも怒ってしまったもんだで、それからこんなことになりましたわい。伏見屋の旦那の量見じゃ、『おれが出たら』