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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

01 第一部上

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页

青空文庫

さて、このたびの異国船、国名相尋ね候ところ、北アメリカと申すところ。大船四艘着船。もっとも船の中より、朝夕一両度ずつ大筒など打ち放し申し候よし。町人並びに近在のものは賦役に遣わされ、海岸の人家も大方はうちつぶして諸家様のお堅め場所となり、民家の者ども妻子を引き連れて立ち退き候もあり、米石日に高く、目も当てられず。実に戦国の習い、是非もなき次第にこれあり候。八日の早暁にいたり、御触れの文面左の通り。

一、異国船万一にも内海へ乗り入れ、非常の注進これあり候節は、老中より八代洲河岸火消し役へ相達し、同所にて平日の出火に紛れざるよう早鐘うち出し申すべきこと。

一、右の通り、火消し役にて早鐘うち出し候節は、出火の通り相心得、登城の道筋その他相堅め候よういたすべきこと。

一、右については、江戸場末まで早鐘行き届かざる場合もこれあるべく、万石以上の面々においては早半鐘相鳴らし申すべきこと。

右のおもむき、御用番御老中よりも仰せられ候。とりあえず当地のありさま申し上げ候。

以上。」

実に、一息に、かねて心にかかっていたことが半蔵の胸の中を通り過ぎた。これだけの消息も、木曾の山の中までは届かなかったものだ。