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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

01 第一部上

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页

青空文庫

元弘二年新田義貞を輔けて、鎌倉を攻め、北条高時の一族を滅ぼす、先世の讐を復すというべしとしてありますよ。」

「みんな戦場を駆け回った人たちなんですね。」

寿平次も半蔵も互いに好奇心に燃えて、そのくわしい系図に見入った。

「つまり三浦の家は一度北条早雲に滅ぼされて、それからまた再興したんですね。」と七郎左衛門は言った。「五千町の田地をもらって、山上と姓を改めたともありますね。昔はこの辺を公郷の浦とも、大田津とも言ったそうです。この半島には油壺というところがありますが、三浦道寸父子の墓石なぞもあそこに残っていますよ。」

やがて半蔵らはこの七郎左衛門の案内で、茶室の方へ通う庭の小径のところへ出た。裏山つづきの稲荷の祠などが横手に見える庭石の間を登って、築山をめぐる位置まで出たころに、寿平次は半蔵を顧みて言った。

「驚きましたねえ。この山上の二代目の先祖は楠家から養子に来ていますよ。毎年正月には楠公の肖像を床の間に掛けて、鏡餅や神酒を供えるというじゃありませんか。」

「わたしたちの家が古いと思ったら、ここの家はもっと古い。」

松林の間に海の見える裏山の茶室に席を移してから、七郎左衛門は浦賀の番所通いの話などを半蔵らの前で始めた。