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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

01 第一部上

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,629 字 · 408 页

青空文庫

やり方がすべて露骨じゃありませんか。君と二人で相州の三浦へ出かけた時分さ――あのころには、まだこんなじゃありませんでしたよ。」

「お師匠さま。」

夕闇の中に呼ぶ少年の声と共に、村の方からやって来る提灯が半蔵たちに近づいた。半蔵の家のものは帰りにおそくなるのを心配して、弟子の勝重に下男の佐吉をつけ、途中まで迎えによこしたのだ。

山の上の宿場らしい燈火が街道の両側にかがやくころに、半蔵らは馬籠の本陣に帰り着いた。家にはお民が風呂を用意して、夫や兄を待ち受けているところだった。その晩は、寿平次も山登りの汗を洗い流して、半蔵の部屋に来てくつろいだ。

「木曾は蠅の多いところだが、蚊帳を釣らずに暮らせるのはいい。水の清いのと、涼しいのと、そのせいだろうかねえ。」

と寿平次が兄らしく話しかけることも、お民をよろこばせた。

「お民、お母さんに内証で、今夜はお酒を一本つけておくれ。」

と半蔵は言った。その年になってもまだ彼は継母の前で酒をやることを遠慮している。どこまでも継母に仕えて身を慎もうとすることは、彼が少年の日からであって、努めに努めることは第二の天性のようになっている。