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ゆめのさつじん

夢の殺人

浜尾 四郎

「新青年」1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,670 字 · 26 页

青空文庫

反之、要之助は水準を正に抜けでた美青年である。濃い眉、高い、筋の通った、然しながら鋭くないなだらかな線を有った恰好のよい鼻、それにそれ迄田舎の日の下にいたとは思われぬ其の皮膚の白さ、そして豊かな双頬、之等が寄って要之助の顔を形造っているのである。

要之助は藤次郎よりは二つ年下だった。だから若し藤次郎が、要之助の美貌に対して、甚しく心を動かしたとしても少しも無理はないのだが、不幸にして事実はそういう方向に向っては発展しなかった。否、藤次郎は、此の美青年をはじめて見た時に既に或る不安を感じたのである。

此の感じははたして事実となって現われた。要之助の美貌は同性の心を動かすより何より異性の美代子の心を動かしてしまった。

彼がN亭に来てから二、三日の中に、既に藤次郎は、美代子が要之助にちやほやするのを見なければならなかった。ただそれだけならば未だいい、美代子は今までの態度を全然変えてしまった。藤次郎は彼女からみむきもせられなくなって来たのである。

無論、彼は煩悶した。焦慮した。そしてその苦しみの中に在って彼は頼りにならぬものをひたすらに頼った。それは要之助が、まだ若くて初心だということと、彼が非常に真面目な青年だということだった。