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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
言いつけられた小品の花は、もうとっくに活け上げているのである。
花器といっても今ではまるでないも同様である。ただ一つ、焼けた灰のなかから掘り出して来た朝鮮三島の瓢形の徳利が残っている。少し疵はついたがまだ使われるのを惜しんでここまで持って来ているのである。小品はその徳利に挿してある。あしらいには熊笹の小葉を利かせてある。この熊笹は庭にいくらでも生えている。それを見たてて取って来たものである。
鶴見はその花について格別批評もしない。ただ時々目を遣って、ちらりちらりと見ている。技術というものは理論よりも直接なものである。どうやら見苦しくないだけに出来ている。かれはそう思って花を幾度も見返している。
「花を活け上げた時の心持だね。それを軽く扱ってはいけないよ。存分に活かったと思う時には、それに応ずるだけの心持が、たとえ無意識であろうとも、その作者には感ぜられよう。それが華道の精神というものだ。自然に思い当るところのあるものだから、その心持を忘れずに抱いていなくてはいけないよ。技術ばかりでは本当の修業にはならないものだからな。」
鶴見は娘の静代にそういって諭していたが、それも終ると、番茶をいれさせて、一口飲んでほっとしていた。