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ゆめはよびかわす

夢は呼び交す

蒲原 有明

――黙子覚書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页

青空文庫

そこにはかねて企図しておいた考がその実行を待っているというようなけはいがある。

この浅草行は鶴見たち二人にとって異存のあるべきようはなかった。たとえ多少の異存があったにしろ、異存をあらせまいとする力がその計画のうちにこめられていた。藤村の発言にはいつの場合でも、あとにはひかぬ意志のはたらきが婉曲なことばのなかにかくされていぬというためしはない。

浅草ではどんな風にわれわれ二人が訓えられたか、それを今語ってみたい。藤村は例の玉乗り興行場の前に立ちどまって、ゆっくりと煙草をふかしている。そしてまたゆっくりした言葉つきで、調子を落してこういった。「君。わかるかね。あれがトランペット、それからフリウト。好いかね。こっちがクラリオネット。みんな吹奏楽器だね。」

興行場の看板の下の棚の上にはけばけばしい服装をした楽師たちが押合って身づくろいをしている。われわれは藤村の指揮するままに場内に入って、しばらくのあいだ、玉乗の技をおとなしく見る。まるで従順な田舎出の若者である。鶴見はすまぬとはおもいながら心の中で反撥した。

「これからね。多分大公孫樹の向うの、境内のはずれのところであったかと思うが、僕はいつぞや、観相の看板を出した家を見たことがあったよ。