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ゆめはよびかわす

夢は呼び交す

蒲原 有明

――黙子覚書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页

青空文庫

実は驚いているところさ。」

「宗祇が『古今集』のやまとうたは人の心を種とするといっているのを釈して、それを元初一念の人の心と断じ、忽然念起、名づけて無明と為すというのはこれだ。無明は煩悩だ。この元初の一念が一切万物の根元だといって、「さらば無明の一念より歌もいでくるなり」と確言している。卓見だね。きみもいつかこの『起信論』の忽然念起を挙げて衆生心にすべてをもとづけようとしていたね。」

「そのとおりだ。あんまり察しが好いのであとがこわいよ。でもね、かれが文芸復興期と変革期との交叉する辻に立って法を説いたということは争われない。復興期の人としては、美の伝統者でもあり、美の発見者でもあった。変革期の人としては啓蒙に従事した。そのためには東西に倦むことなき旅をつづけていた。かれには宗教もあり哲学もあり学問もあった。そして人の心に自覚の精神を起して文化の光を認めさせるように努めていた。そういう人格者は見わたしたところ殆どないね。宗祇はたしかに近代文芸の祖と仰がれて好い。おれの結語はそこにあるのだよ。」

鶴見は景彦との問答を切りあげた。景彦はどうしたものか一度も姿を現わさない。