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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
ただ無計画に筆をつけはじめ、勢いに駆られてめくら滅法に書き了せたというに過ぎない。終始漫然として断片的な資材を集めたに過ぎない。釘も打たず鎹もかけていない。すぐにばらばらに崩壊する危さによって、その危さだけが逆に前後の文章を支持しているかに見える。
ひとくちに冒険といえば冒険であろう。綱わたりであろう。わたくしはもとよりそういうことを気にしつつ書きつづけたのである。
断片に断片が積み重なる。暗い一個の星の誕生を受けいれて、幼年時、少年時、青年時の追懐を、世相の推移と、それが現在の生活につながって起伏を見せているすがたとが、ただ漫然と描き出されている。漫然というよりもむしろ雑然としてきまぐれに点滅するおぼつかない燈火である。そこには人間像を構成するプロフィイルすら現われてはいない。すべては小さな行為のグリンプスである。しかしここで仮りに救って考えれば、一閃の光線によって照しだされたところに脈絡がある。統合がある。わたくしはいつになってもこの断片的なものを溺愛する。
恐ろしいちからで虚空を押移る鱗雲、
西から東へ沈黙の颶風が歩む、
進み、躍り、飛ぶ、さあれただ押移る。