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ゆめはよびかわす

夢は呼び交す

蒲原 有明

――黙子覚書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页

青空文庫

「その発明をしたのは戦災前の事だがね。何か防空設備のことで一軒おいたとなりの箱職の主人が遣って来た。親分肌で、体は小柄であるが才気が勝っている。それで人の嫌がる組長を引き受けて勤めているのだ。おれがその男に今いった通りの酒代用品のことを話して見た。――そんなことで、やっと我慢しているが、確かに利目があるから、一時のごまかしとも違うなんどと、おれはその時強調していい足したことででもあったろう。あとで家のものに聞くと、その組長の親分が、しみじみと、それじゃ旦那も可哀そうだといったそうである。その親分はね。やっぱり酒好きで、一週に二度ぐらい、夜になってから女房に隠して、どこかへ無理をして酒飲みに出掛けるということであった。おれはこれを聞いて、可哀そうな旦那はよかったと思った。そう思うと、心の底からおかしさが込み上げてきたよ。渋江抽斎は鰻酒というものを発明したそうだが、おれの南蛮渋茶の方がうわ手だな。だれか南蛮渋茶を飲み伝えてくれる人々がありそうなものだがね。」

「随分おめでたい話ですな。もう好い加減にしておつもりにしましょう。」

「何ね。そんなに痺れをきらさないで、もう少し我慢して聞いているのだね。