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たいしかんのしまつきかん

大使館の始末機関

海野 十三

――金博士シリーズ・7――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,934 字 · 20 页

青空文庫

1

ずいぶんいい気持で、兵器発明王の金博士は、豆戦車の中に睡った。

睡眠剤の覚め際は、縁側から足をすとんと踏み外すが如く、極めてすとん的なるものであって、金博士は鼾を途中でぴたりと停めたかと思うと、もう次の瞬間には、

「さて、この大使館では朝飯にどんな御馳走を出しよるかな」

と、寝言ではない独り言をいった。

博士が、年齢の割にかくしゃくたる原因は、一つは博士の旺盛なる食慾にあるといっていい。

目の前に押釦が並んでいた。

押釦というものは便利なもので、それを指で押すだけで、大概の用は足りてしまう。以前、博士のところへ、新兵器の技術を盗みに来た某国のスパイは、博士のところにあった押釦ばかり百種も集めて、どろんを極めたそうである。

閑話休題、博士が、その押釦の一つを押すと、豆戦車の蓋がぽっかり明いた。博士はその穴から首を出して左右を見廻した。

「やあやあ、この豆戦車を明けようと思って、ずいぶん騒いだらしいぞ」

この豆戦車は、某国大使館の一室に、えんこしているのであった。部屋の寝台は、片隅に押しつけられ、床には棒をさし込んで、ぐいぐい引張ったらしい痕もあり、スパンナーやネジ廻しや、アセチレン瓦斯の焼切道具などが散らばっていた。