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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

覚えていろよ、いい事アねえぞ」

「覚えているとも」とトン公は笑い、「悪いことは云わねえ帰った方がいい。そうだ足下の明るいうちにね」

云い捲くられた釜無しの文は、縹緻を下げて帰ることになった。

足音が門口から消えた時、「爺つあん」は深い溜息をした。

「……すんでに瞞される所だった。トン公、ほんとに有難うよ」

「ナーニ」と云ったがトン公は、頭の繃帯を手でさぐり、「どうもいけねえ、まだ痛えや。……だがね「爺つあん」実の所はね、紫錦さんは浮雲えんだよ」

「え、どうしてだい? どうして浮雲えな?」

「源公の野郎ヤケになって、江戸中探しているらしいんだ。それで今夜もぶつかったって訳さ。この頭の傷だって、つまり何だ、その時の土産さ。……あれいけねえ、まだ痛えや!」怨めしそうな顔をした。

14

※(歌記号、1-3-28)よし足引の山めぐり、四季のながめも面白や、梅が笑えば柳が招く、風のまにまに早蕨の、手を引きそうて弥生山……

その翌日の午後であったが、小堀義哉は裏座敷で、清元の『山姥』をさらっていた。

と、襖がつつましく開いて、小間使いのお花が顔を出した。

「あの、お客様でございます」