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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页
支那製か南蛮製だ」
「マアさようでございますか」お錦も興味を感じてきた。
「ひとつ、開けて見ましょうかな。おおここに鍵穴がある。さて鍵だがお持ちかな?」
「ハイ、うちにならございます」
「では明日にでも持って来て、ともかくも開けて見ましょうかな」
「そういうことに致しましょう」
ここで話がちょっと切れた。
もう夕暮に近かった。庭の築山では吉野桜が、微風にもつれて散っていた。パチッ、パチッと音のするのは、泉水で鯉が躍ねるのであった。
何気なくお錦は庭を見た。往来と境の黒板塀にかなり大きな節穴があったが、そこから誰か覗いていると見えてギラギラ光る眼が見えた。
「あれ!」とお錦の叫んだ時には、もうその眼は消えていた。
15
やがて夕暮がやって来た。お暇をしなければならなかった。充分の未練を後へ残し、お錦は駕籠で帰って行った。
「よこしまの美であろうとも、美人はやっぱり好ましいものだ」
義哉はこんなことを想いながら、部屋に残っている脂粉の香に、うっとりと心をときめかした。
思い出して三味線を取り上げると、さっきの続きを弾き出した。
※(歌記号、1-3-28)雁がとどけし玉章は、小萩のたもとかるやかに、へんじ紫苑も朝顔の、おくれさきなるうらみわび……