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たいもうをいだくかっぱ

大望をいだく河童

坂口 安吾

「アサヒグラフ 第四八巻第三号」1947(昭和22)年7月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 921 字 · 2 页

青空文庫

昔、池袋にすんでいたころ、小学校の生徒に頻りに敬礼されて、その界隈を遠廻りに敬遠して歩かねばならなくなったが、僕に似た先生がいたに相違ない。

戦争中、神田の創元社へよく遊びにでかけたが、日大生に時々敬礼された。何先生が僕に似ているのか気にかかった。

まだ焼けて幾日にもならぬ高田馬場駅で、夜であったが、軍服の青年(将校らしい)に挨拶され、第二高等学院の何々先生ではありませんか、とこれは明らかに名前を言われたのだが、忘れてしまった。間違われて挨拶を受けるのはキマリの悪いもので、蒲田の易者は僕が手をだすと、

「旦那からかっちゃアいけませんや」という。本職の名人と思ってるのか、蒲田の顔役に似た旦那がいるのかも知れぬ。

井伏鱒二村長がキイキイ声で、

「ヤイ安吾、貴様、けしからんぞ」

「なぜ」

「銀座を歩いていたろう。ヤイ、安吾、僕がうしろから背中をたたいたら、新田潤じゃそうじゃないか。恥をかいた。よく似とる。けしからんぞ、こら」

後日浅草のお好み焼き屋で新田潤にはじめて会ったが、似ているものか。

中村地平と僕が一緒に歩くと、どちらが兄さんですか、ときかれたことが二三度あったが、似ていると直覚すると誰でも似て見えてしまうのだろう。