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だいこのは

大根の葉

壺井 栄

「文芸」改造社、1938(昭和13)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,854 字 · 50 页

青空文庫

胸がどきどきしてきた。顔をしかめ、立ちどまってフウフウ肩で息をした。鬼が立ちどまると、みんなも立ちどまった。

鬼が来んまに豆煎って噛あまそ

鬼が来んまに豆煎って噛あまそ

みんな健の間近へよって来て、思い思いに鬼をとりまいてしゃがみ、てんでに地べたをかきまぜて豆を煎った。鬼が身をかまえると、さっと腰を浮かしてわあっと逃げだす。健は真顔になって追っかけた。真赤に上気して、ころびころび駆けた。紺の毛糸のズボンがずれて足にからまった。とうとう泣きそうな顔でバベの木に胸をつけてもたれこんでしまった。

鬼が来んまに豆煎って噛あまそ

もう健は見むきもしなかった。バベの木の小枝にもぶれついている青黒い葉っぱや、黒いざらざらした木肌のところどころに、もやしのようにひょろひょろと伸びた薄赤い新芽を手あたりしだいにむしっては捨てた。山茶花のような艶のある小さい葉が足下に落ちて、たまっていった。やがて、健はしょぼしょぼと鳥居の方へ歩きだした。

「健ちゃん、もうせんのか、え。」

「健ちゃん、鬼んなってやるせに来い。」

口々に呼びかける。それでも健はとうとう敵に背をむけて荒神様の石段をおりかけた。