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たいしょうじゅうにねんくがつついたちよりのとうきょう・よこはまかんたいしんかさいについてのきろく
大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,429 字 · 19 页
地震は、相変らず時々来るが、火事はまかさ来まいと思い、荷作りなどをしないでも大丈夫だと、下の婆さんに云って一先ずガード下に地震をよけて居るうちに、五時頃、段々火の手が迫って来るので、大きな荷物を四つ持ち、鎌倉河岸に避難した。始めは、材木や何かをつんで置いたところに居たが、あとで気がついて竹で矢来をくみ、なかに、スレート、石のような不燃焼物のあるところにうつり、包を一つスレートの間に埋めて居た。が、火の手が迫って来ると、あついし、息は苦しいし、大きな火の子が、どんどん来る、後の河には、やけた舟が漂って来て棧橋にひっかかる。男が棹でおし出してやる。いざとなったら、後の河にとび込む覚悟で、火の子を払い払いして居るうちに、朝になり、着のみきのままで林町に来た。
下の婆さんは、ガード下に居たとき近所の人に、小さい女の子と、酒屋の十ばかりになる小僧を一寸見てやって下さい、とたのまれたので、その子にすがりつかれたばかりに何一つ出さずにしまった。
ばあさん曰く「憐れとも何とも云えたものじゃあありませんや、一寸此処に待っておいで、おいでと云っても、可怖いから行っちゃあいやーとつかまえてはなさないんでしょう。