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たいしょうじゅうにねんくがつついたちよりのとうきょう・よこはまかんたいしんかさいについてのきろく
大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,429 字 · 19 页
私も、自分の荷物を出そうとして、ひとの子をやき殺しちゃあ寝ざめがよくないと思って、我慢してしまいましたが……それもいいがまあ貴女、その小僧が朝鮮人の子だって云うじゃあありませんか、私口惜しくって口惜しくって、こんなんなら放ぽり出してやればよかったと思ってね、傘一本、着換え一枚ありませんや。」
その婆さんが話したが、呉服橋ぎわの共同便所の処で三十七人死んだ、その片われの三人が助かった様子、中二人は夫婦で若く、妻君は妊娠中なので、うしろの河に布団をしずめて河に入れて置いたが、水が口まで来てアプアプするので、仕方なく良人も河にとび込み舟に乗ろうとすると、舟は皆やけて居る。やっと、橋の下に一つやけないのがあったのを見つけ、それに二人でのり、手でかいて、逃げ出した。そのあとにのこった三十七人が、火にあおられ、救ろう助かろうとして居るうちに、やけ死んでしまったのであった。
その男は、後親類のものに会ったとき泣いて今度のような目にあったことはないと云った由。
深川の石井の逃げた様子。
すぐ舟に家族のものと荷もつだけをのせ、大川に出た。ところが越中島の糧秣廠がやけ両国の方がやけ、被服廠あとがやけ四方火につつまれ川の真中で、立往生をした。