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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

もう一つ幸いなことは、ほとんど絶家のようになっていて、荒れるに任せていた宏大な机の家屋敷が、これらの連中が移り住むことになってから、急に光りかがやきはじめたような有様であります。

人間の家は、人間が住まなければ駄目なものです。

お松のここで書いているお手本は、単に道場へ集まる子供たちに分けてやるのみならず、これから三里も五里も山奥の炭焼小屋や、猟師の家庭にまで入ります。

どうかするとこうしているところへ、武者修行が尋ねて来ることがある。道場の名残を惜しむためか、そうでなければ、化物退治にでも来た意気込みでおとのうて見ると、応対に出るのが妙齢なお屋敷風のお松ですから、さすがの武者修行がタジタジで、

「ははあ、では、あなたは机竜之助殿のお妹御でもござるか……」

といってお松の顔をながめ、薙刀の一手もつかうものかという思い入れをする。

「いいえ、わたくしどもは、ただお留守居をしているだけなんでございます」

そうしているところへ間もなく、ゾロゾロと草紙をかかえた近辺の子供が集まって来るものですから、武者修行は到底、薙刀をつかう娘ではないとあきらめて退却する。

海蔵寺の東妙和尚なども、お松の字をことごとく称美して、