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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
23 他生の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页
ほどなく、枝つきの柿の実をおびただしく手折って畑道を駈けて来る二人の少年、年はいずれも十五六。
「あ――」
といってお松と顔を見合わせ、恥かしそうに以前置捨てた剣術の道具の傍へよって、その柿の枝を結えつけて肩にかける。二人の少年の勇ましい後ろ姿を見るにつけ、思い起すは宇津木兵馬のこと。
武術は人に敢為の気象を教えるが、抗争の念を助長させたくないものだ、との優しい心づくし。
二十五
根岸に引移った神尾主膳と、お絹とは、このごろ痛切に金がほしいと思っています。
誰でも大抵の人は金がほしいと思っているが、この二人にとって、それがいっそう切実なのです。
神尾主膳はある時、つくづくと思いました、
「金というやつは女とおなじことで、出来る時は逃げても追っかけてくるが、出来ないとなると、追いかけても逃げてしまう」
お絹もまた口に出して言う、
「どうかして、お金がはいる工夫はないものかしら」
実際、金というものがない以上は、都会生活の興味の大部分は失われる。こうして不景気に隠れん坊をしているくらいなら、深山の中も、根岸の里も、変ったことはない。
ことに金の有難味を知っている神尾主膳――金を儲けることの有難味ではない。