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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

「それで、そういう人と見ると、わたしはなんだか、自分の味方を見つけでもしたように、無性にたのもしくなってしまって……なんでもかでも、すっかりぶちまけて、その人にやってしまいたいような気になるのですね、おかしいでしょう」

道はようやく沼を離れてしまって、林の中深く入って行くようです。

「先生、わたしにばかり白状させてしまっては罪ですよ、懺悔話をお聞かせください、ぜひ、どうぞ」

度胸がおちついたとはいうものの、手ごたえがないので、不安が不安を追っかけるように、後家さんは竜之助に促しました。

けれども、何としてか、竜之助は答えることなしに、少し歩みを早めて、ずんずんと後家さんより先に立って木立の中深く進んで行くものですから、後家さんは、肪ぎった大きな身体をそれに引きずられるように、追いすがるように歩いて、

「あんまり奥へおいでになってはいけません……お池の方へ戻りましょうよ」

その時、沼のあなたに当って、谺を返す一つの呼び声がありました、

「お内儀さん――お内儀さん、どちらへおいでになりました」

それは林を隔て、沼を隔てて呼ぶ浅吉の声にまぎれもありません。

この声を聞くと後家さんが、いまいましそうな、また、いつになく怖ろしそうな顔になって、声のする方へ向き直ったけれども、そちらへ足をめぐらそうとはしません。