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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

同時に、活字本と、普通の木版本の相違をも、よく説明して聞かせたことでありました。

活字は、すべて一字一字ずつとりはずしのできるもの。普通の木版は、一面に文章そのままを平彫にしてしまうもの。良斎の説によると、日本の活字の最初は、平安朝以前にあったが、最も盛んなのは徳川家康の前後ということ。また近代西洋式の流し込みの活字を創造したのは長崎の人、本木昌造ということになっているが、実は播磨の人、大鳥圭介がそれより以前に実行している……というようなことまで知っているところを見ると、この人は国学のみならず、現代の知識にもなかなか明るい人と見える。

その翌日から万葉集の講義が始まりましたが、その講義は良斎らの座敷を選ばず、名物の炬燵を仲介することもなく、この炉辺をそのまま充てることになりました。

一冊の万葉集を真中に置いて、炉の一方には良斎先生が陣取り、それと相対して北原賢次とお雪ちゃん――陪聴の役として留守番の喜平次も顔を出せば、お雪ちゃんの連れの久助さんも並んでいる。

池田良斎は、燃えさしの粗朶の細いところを程よく切って、それをやや遠くの方から万葉集の字面に走らせ、