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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

あの、奥信濃の飛騨の国との境、白骨の温泉で冬籠りをなさるというのは、ずいぶん冒険でございます、それはできないことはございますまいが……雪が降り積って、山も、谷も、埋めた時は、全く人間界を離れてしまいますからな、御用意に如才もございますまいが、食物から寒さをしのぐ用意まで、念をお入れになりませんと……それと雪の降る日などは、飢えに迫って猛獣が、人のにおいをかぎつけてまいりますから、それもお気をつけなさいませ」

しかしながら、それがために、いまさら思い止まるべきものではありません。

久助だけが徒歩で、お雪と、竜之助は馬に乗り、他の一頭には、米とその他の荷物をつけて、松本をゆっくりと立ち、野麦街道を島々の村まで来て早くも一泊。

翌日早朝にここを立って、島々の南谷を分け入りました。

島々では、案内者がこういうのを聞きました、

「山地は秋の来るのが早いですからね。左様でございます、穂高の初雪は九月のうちに参りますよ。八月の末になりますと、徳本峠の頂あたりが真赤になって、九月の上旬になりますと、神河内のもみじがととのって参ります。ごらんなさい、この辺も、もう青と紅とがとりどりで、錦のようになってしまいました。