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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

立っているのだ。

それから先だ、そこまでは人形でも勤まるが、それから先が堪るまいではないか、と南竜軒が苦笑する。

友達殿はあくまで真面目くさって、それからが極意なのだ、そうして立合っているうちに、先方が必ず打ち込んで来る。面とか、籠手とか、胴とかいって、打ち込んで来る。

南竜軒の曰く、打ち込んで来れば、打たれちまうじゃないか、こっちは竹刀の動かし方も知らないんだぜ。

友達殿曰く、そうさ、打たれたのが最後だ、どこでもいいから打たれたと思ったら、お前は竹刀を前に置いて、遥か後ろへ飛びしさり、両手をついて平伏し、恐れ入りました、われわれの遠く及ぶところではござらぬといって、丁寧にお辞儀をしてしまうのだ。

なるほど――

そうすれば、先方の大先生、いや勝負は時の運、とかなんとかいって、こちらを労わった上に、武芸者は相見たがいというようなわけで、一晩とめて、その上に草鞋銭をくれて立たせてくれるに相違ない。芳名録を取り出して先生に記名してもらう。その芳名録を携えて、次の道場を同じ手で渡って歩けば、日本全国大威張りで、痛い思いをせずに武者修行ができるではないか。