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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
気むずかしいだけに祭礼の故実も心得ているらしい。あんなのには逆らわずに世話を焼かしておく方がいいとでも思ったのでしょう。いくぶん尊敬の意味でいうことを聞いているらしいから、この親爺、いよいよつけ上り、
「さあ、若い衆、拙者が音頭を取るから、それについて景気のいいところを一つ……オーイ、ヤレーヨ、エーンヨンヤレテコセー、コレハセー、イヤホーウイヤネー」
「ヤーイ」
若い衆はわけもなくこの音頭に合わせてひっぱると、親爺、御機嫌斜めならず、
「ホラ、もう一つ、エーヤラエ、ヨイサヨイヤナ、アレハエンエン、アレハエンエン」
「ヨーイ、ヨーイヨーイ」
この親爺一人でお祭りを背負って立つような意気組み。これぞ、以前の小者が尋ね惑うているところの先生であります。
またしても、あまりの賑やかさに、宇津木兵馬は再び二階の障子をあけて見おろしますと、この通りの景気です。
その中を、右に左に泳ぎ渡って指図をして歩く変な親爺がある――兵馬は本来、道庵先生とは熟知の間柄で、ずいぶん今まで先生の世話にもなったことがあるのだから、そう見違えるはずはないのだが、いかに道庵先生だからとて、信州の松本までお祭の世話焼に来ていようとは思わず、第一、その頭が違っている。