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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

だから、宇治山田の米友が、一途に加賀守の横暴を憤り出したのは、筋違いでした。

けれども、唇がワナワナと慄えて、杖槍を握る手と腕が、ムズムズと鳴り出したのは、どのみち、相手が相手だから……という武者振いの類です。

驀進に――但し、跛足を引いて、夕暮の軽井沢の町を、怒髪竹の皮の笠を突いて馳せて行くと、

「友様……米友様……」

と助けを呼ぶの声。意外にも程遠からぬ路傍で起りました。

見れば雲つくばかりの無頼漢。遠目で見てさえも、加賀様の御同勢とは見えません。

五

「お、おいらの先生を、ど、どうしようというんだ?」

米友はまず振別の荷物を地上へ投げ出しました。

荷物を地上へ置くのと、その手にした杖槍を取り直したのと、どちらが早かったかわかりません。

その独流の杖槍――穂のすげてない――は電光の如く、裸松のいずれの部分を突いたかわからないが、大の男の裸松が、物凄い声を出して後ろへひっくり返りました。

「先生、怪我はなかったか?」

米友は早くも、道庵の背中の上の切石をはね飛ばして、それを介抱をしようとすると、道庵が桔槹のように飛び上りました。

「占めた! もう占めたもんだ」