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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

あとを追いかけりゃ、蛇の道は蛇というわけでもねえが、下手な目あかしよりはちっと眼は利いている、ここ幾日のうちには、首尾よくお手渡しをした上で、またお前さんのところまで舞い戻って来てお目にかかる。ところで……」

がんりきはこう言って、はや出立もし兼ねまじき勢いを見せ、箱を包み返しにかかりながら、呆れ返っている福松の前へ、切餅一つをポンと投げ出し、

「三つあるうちの一つだけは、骨折り賃に天引としてこっちへ頂いて置いても罪はあるめえ、御神燈冥利というものだ、遠慮なく取って置いてお茶の代りにしな」

百両の金を気前よく――いくら人の物だといっても、そう気前よく投げ出されてみると、何はともあれ女として、見得も、外聞も、怖れも忘れて、有頂天とならざるを得ない。

「まあ、こんな天引をいただいて、ほんとうに罰は当らないか知ら――そうさねえ、もともと元も子もないと思い込んでいたものを、お前さんがそれを届けに行ってやる御親切から比べりゃ、なんでもないわねえ、済まないねえ――わたし、嬉しいわ」

百両の金包を額に押当ててこすりつけた福松。

その時、表の御神燈の方をハタハタと叩く音がして、