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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

。

そういう空気のうちに、米友は関ヶ原の駅へ乗込もうとして、その間の野上というのを通りかかったものです。

そこにかなりの混乱を見ました。

とある店前に篝を焚いて、その前で多数の雲助が「馬方蕎麦」の大盤振舞にありついているところです。

女中たちが総出で給仕をしてやっているが、その奥の屋台に控えて、

「さあ、みんな、遠慮せずに食いな、うんと食いな、ここは桃配りといってな、家康公が桃を配ったところだ。ナニ、桃じゃ無え、家康公のは柿だと――どっちでもいいやな、今夜は蕎麦配りの山だ、うんと食いな。お代り、お代り、あちらの方でもお代りとおっしゃる、こちらの方でも……おいきた、若衆、こっちへ出しな。さあ、お待遠さま――」

大盤振舞の施主自身が、大童になって盛替えのお給仕の役をつとめている。

それを見て馬上の米友が、あっ! と仰天しました。

この大盤振舞の施主は、ほかならぬ道庵先生でありましたからです。

それとも知らぬ道庵先生は、

「さあ、遠慮をせずと、いくらでもお代りを言ってくんな、今日はお蕎麦でたんのうしてもらうんだが、明日という日は白いおまんまを炊き出して、兵糧をうんと食わせるから、すっかり馬力をかけて石田三成をやっつけてくんな、毛利も、浮田も、何のそのだ、さあ、お代り、お代り」