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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
と言って、どうしても弁償を取ることをうけがわないのです。
「瓦っかけと言ってしまえばそれまでだが、あれで好事家の手にわたると、相当珍重の品なのだ、それにあの箱が珍しいと思いましたよ」
「いや、手前共では、その道の熱心家が御所望でしたら、只で差上げてもよろしいと存じていた品でございます」
「盗んだ奴は、あれを持って行っても始末に困るだろう、もしな、御主人、帰りまでにめっかったら、わたしが所望いたしたい」
「よろしうございますとも。全く仰せの通り、盗んだ奴も、あれを持って行ったところで、それこそあけて口惜しき、というところでございましょう――いずれその辺に放り出してあるかも知れません。時に、お連衆のお方にも御異状はございませんでしたか」
伊太夫が引連れて来た四人の同勢のうち、三人までは、伊太夫の部屋を守護するような陣形で別室へ寝ましたが、これらはなかなか用心が厳しくて、寝ている間も油断がなかったのかどうか、更に被害の形跡もありませんでしたが、その最後の下男の茂作が、この騒ぎにまだグウグウと眠っている。
これを起して見ると、こいつが鬱金木綿の胴巻がないといって急に騒ぎ出しました。