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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
41 椰子林の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页
と言ってがんりきは、炉辺に飲みさしの関守氏の九谷の大湯呑に眼をつけました。
「よし来た」
関守氏は異議なく、その茶がすを湯こぼしに捨て、がんりきの前へ提供してやると、がんりきの百は、左手に隠した四個の小賽を、左の耳元で、巫女が鈴を振るような手つきに構えたが、関守氏は、その構えっぷりを見て感心しました。
十一
こいつ、ロクでもねえ奴だが、さすがにその道で、賽を握らせると、その手つきからして、もう堂に入ったものだ。
四粒の天地振分けが、その中に隠れているのか、いないのか、外目で見てはわからない、軽いものです。もとより商売人の賽粒のことだから、軽少を極めて出来たものには相違ないが、それにしても軽過ぎるほど軽い、その手つきのあざやかさに、関守氏がある意味で見惚れの価値が充分ありました。
そこで、耳元で振立てると、はっと呼吸が一つあって、振一振、左の小手が動いたかと見えると、天地振分けを四箇まで隠した五本(?)の指がパッと開きました。その瞬間、四粒の天地は、早くも五倫の宇宙から、壺中の天地に移動している。つまり、はっという間に四つの小粒が、今し関守氏から借り受けた湯呑の中へ整然として落着いているのです。