轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

と言ったのは、まごうべくもないお松の声であります。

無論、この絶望に近い呼び声に対して、なんらの表情をも返すことのできない畜生の身ではあるけれども、ある一種の意気込みを示していることだけはたしかであります。

この犬の性質と、挙動と、それから性質と挙動から起る表情を知り抜いているはずの人には、夜であろうとも、表情の機関が働こうとも働くまいとも、その気合は充分に受取れるのです。代って言ってみれば、

「お松さん、どうしたというのです、あなたにも似合わないじゃありませんか、さあ、どこへなりとわたしを御案内して下さい、あなたが行ききれないところへも、わたしなら行きます――あなたが相手になれない相手にも、わたしなら、なることができるかも知れません、さあ、わたしを、どこへなりとやって下さい」

こう言って、息をきりながらも、落着いて促し励している呼吸は、たしかなものです。

それでもお松から、行けとも、止れとも命令の出ないのをもどかしがって、

「ね、あなたは、七兵衛おじさんを尋ねて、こんなに心配苦労をしているのでしょう、わたしもそれが急に気にかかってたまらないから、それで、ここまで抜けがけをして来たのですよ、七兵衛おじさんはどうしました、あなたが暗示をさえ与えて下さるなら、わたしならきっと嗅ぎつけて上げます、さあ、早く」