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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

「それはそれは――で、なにかな、あの番所に居候の連中は、みんな同じ船に乗込んで来たのか」

「はい、一人残らず、茂太郎も、金椎さんも、マドロス君も、もゆるさんも――それから、お松に、登様――土地の船頭さんたち」

「おお、それはそれは――それを知らないで、このまま房州へ舞い戻ろうものなら、飛んだあとの祭りを見せられるところであった、よくお前さん、知らせておくんなすった」

「お話し申し上げると長うございますが……」

この時、遥かにみとおしのきく河原の両岸を見ると、こしかたの方からは、さいぜん飯屋へ出張したらしい岡っ引が先に立って、村役人らしいのを数名引具して、こちらへ取って返して来る様子。それからまた一方には、槍を押立てた同勢が、長町の方から物々しげにやって来る。

それを見ると、右の蛇籠作りが、多少そわそわし出して、

「のちほど、ゆっくりお話し申し上げましょう。今晩、先生は、どちらへお泊りでいらっしゃいますか」

「わしかい――まだどこといって、宿はきまらないが、とりあえず、大町の高橋玉蕉という女の学者のところをたずねて参るつもりだ」

「大町の高橋先生とおっしゃいますか」